この記事では,現役名大生が2024年の名大理系数学の問題と解答・解説についてまとめます。
第1問 ー接線の本数と方程式の整数解ー
関数 \(\displaystyle f(x)=\sqrt{x}+\frac{2}{\sqrt{x}} \; (x>0)\) に対して,\(y=f(x)\) のグラフを \(C\) とする。
(1) \(f(x)\) の極値を求めよ。
(2) \(x\) 軸上の点 \(P(t,0)\) からちょうど2本の接線を引くことが出来るとする。そのような実数 \(t\) の値を求めよ。
(3) (2) において,\(C\) の2つの接点の \(x\) 座標を \(\alpha,\beta \; (\alpha<\beta)\) とする。\(\alpha,\beta\) がともに整数であるような組 \((\alpha,\beta)\) をすべて求めよ。
関数の接線と方程式の整数解に関する問題です。
近年の名大理系数学では第1問に比較的易しい問題が置かれる傾向にありますが,今年もその例に倣っており,問題の難易度としては標準的です。
第2問 ー複素数の方程式と解ー
\(c\) を1より大きい実数とする。また,\(i\) を虚数単位として,\(\displaystyle \alpha = \frac{1-i}{\sqrt{2}}\) とおく。複素数 \(z\) に対して, \[\begin{align} &P(z)=z^3-3z^2+(c+2)z-c,\\ &Q(z)=-\alpha^7 z^3 + 3 \alpha^6 z^2 +(c+2)\alpha z -c \end{align}\] と定める。
(1) 方程式 \(P(z)=0\) を満たす複素数 \(z\) をすべて求め,それらを複素数平面上に図示せよ。
(2) 方程式 \(Q(z)=0\) を満たす複素数 \(z\) のうち実部が最大のものを求めよ。
(3) 複素数 \(z\) についての2つの方程式 \(P(z)=0,Q(z)=0\) が共通解 \(\beta\) を持つとする。そのときの \(c\) の値と \(\beta\) を求めよ。
複素数の方程式と解の図形的な考察に関する問題です。
複素数の解の図形的アプローチに関する問題は直近で2022年の第3問に出題されており,今までの名大数学の傾向であった
- 整数問題
- 漸化式で推移を追う確率の問題
から傾向の変化を感じさせます。問題の難易度としては標準的ですが,複素数という範囲の特性柄,難易度以上に差がつきそうです。
第3問 ー空間ベクトルと1次結合ー
座標空間の3点 \(\mathrm{A}(3,1,3)\),\(\mathrm{B}(4,2,2)\),\(\mathrm{C}(4,0,1)\) の定める平面を \(H\) とする。また,\[\overrightarrow{\mathrm{AP}}=s \overrightarrow{\mathrm{AB}} +t\overrightarrow{\mathrm{AC}}\] (\(s,t\) は非負の実数)を満たすすべての点 \(\mathrm{P}\) からなる領域を \(K\) とする。
(1) 内積 \(\overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{AB}}\),\(\overrightarrow{\mathrm{AC}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}}\),\(\overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}}\) を求めよ。
(2) 原点 \(\mathrm{O}(0,0,0)\) から平面 \(H\) に下ろした垂線の足を \(\mathrm{Q}\) とする。\(\overrightarrow{\mathrm{AQ}}\) を \(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) と \(\overrightarrow{\mathrm{AC}}\) で表せ。
(3) 領域 \(K\) 上の点 \(\mathrm{P}\) に対して,線分 \(\mathrm{QP}\) 上の点で \(\overrightarrow{\mathrm{AQ}}=r\overrightarrow{\mathrm{AC}}\)(\(r\) は非負の実数)を満たす点 \(\mathrm{R}\) が存在することを示せ。
(4) 領域 \(K\) において原点 \(\mathrm{O}\) からの距離が最小となる点 \(\mathrm{S}\) の座標を求めよ。
空間ベクトルに関する問題です。
(2) までは教科書にも載っているような基本的な問題であるので確実に取りにいきたいですが,(3) (4) は各点の位置関係を把握できるかが大きく差を分けそうな問題であると思いました。
難易度は標準~やや難です。
第4問 ー確率と積分の融合問題ー
袋の中にいくつかの赤玉と白玉が入っている。すべての玉に対する赤玉の割合を \(p\) (\(0 \leq p \leq 1\))とする。袋から無作為に玉を一つ取り出して袋に戻す試行を行う。試行を \(n\) 回行うとき,赤玉を \(k\) 回以上取り出す確率を \(f(k)\) とおく。
(1) \(n \geq 2\) に対して,\(f(1)\) と \(f(2)\) を求めよ。
(2) \(k=1,2,\cdots \cdots ,n\) に対して,等式 \[f(k)=\frac{n!}{(k-1)!(n-k)!} \int_{0}^{p} x^{k-1}(1-x)^{n-k}dx\] を示せ。
(3) 自然数 \(k\) に対して,定積分 \[I=\int_{0}^{\frac{1}{2}}x^k (1-x)^kdx\] を求めよ。
確率と積分法に関する応用問題です。
ここ数年,名大理系数学では最後の問題に難問が置かれる傾向にありますが,今年も例に漏れず本セット最難問になっています。
実際の試験では他の取れる問題を確実に取るのが吉でしょう。
全体を通して
名大理系数学の特徴の1つとして,取れる問題と難しい問題の緩急が激しいことがあります。ですので,対策として「取れる問題を確実に取りに行き,難しい問題を見極める」ことが必要でしょう。
ここで個人的な体感として設問ごとに難易度を分類分けするとおおよそ次の通りです。
【確実に取りたい問題】
- 第1問 (1)
- 第2問 (1)
- 第3問 (1)
- 第4問 (1)
【差がつく問題】
- 第1問 (2) (3)
- 第2問 (2)
- 第3問 (2)
【あまり差がつかない問題】
- 第2問 (3)
- 第3問 (3) (4)
- 第4問 (2) (3)
実際の試験では【差がつく問題】までをすべて取ると素点で6割程度得点することが出来るので,数学で稼ぎたい人以外はここら辺が及第点になるのではないでしょうか。
第1問,第2問は過去にも類題が数多く出ているタイプの問題であるので,対策として過去問の演習は十分に取り組むと良いように思います。
何はともあれ今年受験した方はお疲れ様でした。
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