【例題あり】変数分離法を使って偏微分方程式(波動方程式)を解く方法

変数分離法を使って偏微分方程式の1つである波動方程式 \[ \frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2}=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} \quad (0<x<\pi ,t>0)\] を解く方法を紹介します。

目次

問題

例題

$0<x<\pi , \; t>0 $ における偏微分方程式 \[ \frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2}=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} \tag{A}\] を解くことを考える。以下の問に答えよ。ただし,境界条件と初期条件は以下の通りで,\(c\) は正の定数である。

境界条件:\[u(0,t)=u(\pi,t)=0 \quad (t>0)\] 初期条件:\[\displaystyle u(x,0)=3 \sin 2x, \; \frac{\partial }{\partial t}u(x,0) =\sin 5x \quad (0<x<\pi)\]

(1) $u(x,t)=X(x)T(t) $ と分離し,$X(x),T(t)$ の満たす微分方程式を求めよ。

(2) (1) で得た方程式についてそれぞれ解を求め,(A) の解を求めよ。

2変数関数 \(u(x,t)\) に対し,\[u(x,t)=X(x)T(t)\] のように,2つの1変数関数の積に分けて偏微分方程式を解く方法を変数分離法といいます。

あんとら

2つの変数で微分して条件を満たす関数はかなり条件が厳しいそう

通常,偏微分方程式で具体的に解けるものはそう多くはありません。

そのため,解ける方程式は限られますが,この波動方程式も含めたいくつかの方程式は解を1変数の積で与えられると仮定し,色々操作した結果,具体的に解くことができます。

【変数分離を行って解ける偏微分方程式の例】

  • 波動方程式
  • 熱伝導方程式(拡散方程式)
  • ポアソン方程式   …など

解答

(1) の考え方

ここからは具体的な解き方になりますが,変数分離法では,まず,\(u(x,t)=X(x)T(t)\) と書けると仮定(変数分離)します。

このとき,変数分離した関数は各々の変数だけで微分できるので微分しましょう。そして,右辺と左辺をそれぞれ \(x,X(x)\) だけの項,\(t,T(t)\) だけの項に分離します。

ここでポイントですが,この式が成り立つためには両辺が共に \(x,t\) に依らない定数であること,すなわち \(\displaystyle \frac{T^{\prime \prime}(t)}{c^2 T(t)},\frac{X^{\prime \prime}(x)}{X(x)}\) 定数関数でなくてはいけません。

このとき,それぞれの変数関数は1変数の常微分方程式になり,後は典型的な操作で解くことができるようになります。

【解答】
\(u(x,t)=X(x)T(t)\) と書けると仮定する。これを与えられた方程式に代入すると \[\frac{1}{c^2}X(x)\frac{\partial^2 T(t)}{\partial t^2}=T(t) \frac{\partial^2 X(x)}{\partial x^2}\] すなわち \[\frac{1}{c^2}X(x)T^{\prime \prime}(t)=T(t)X^{\prime \prime}(x)\]これを辺々 \(X(x)T(t)\) で割ると \[\frac{T^{\prime \prime}(t)}{c^2 T(t)}=\frac{X^{\prime \prime}(x)}{X(x)}\] となる。\[\frac{T^{\prime \prime}(t)}{c^2 T(t)}=\frac{X^{\prime \prime}(x)}{X(x)}\] について,この両辺は定数関数であるので,この定数を \(\lambda\) とすると, \[X^{\prime \prime}(x)=\lambda X(x)\] \[T^{\prime \prime}(t)=\lambda c^2 T(t)\] となる。

(2) の考え方

変数を分離することが出来たら,実際に微分方程式を解いていきましょう。ここでは \(X(x)\) から先に解きましたが \(T(t)\) から解いても問題はありません。また,$\lambda$ によって符号の場合わけがありますが,物理的な考察を行うことで計算量を減らすことが出来ます。

あんとら

\(\lambda \leq 0\) の場合(指数関数or直線)では波は表現できないだろうな…という感覚があると良いかもしれません

【解答】
まず,\(x\) に関する常微分方程式を解く。これは定数係数2階微分方程式であり, \(\lambda\) の符号によって解の関数が異なるので場合分けを行う。

\(\lambda>0\) のとき \[X(x)=A_1 e^{\sqrt{\lambda} x}+B_1 e^{-\sqrt{\lambda} x}\] となる(\(A_1,B_1\) は定数)。境界条件 \(X(0)=X(\pi)=0\) より,\(A_1=B_1=0\) となるが,これは \(X(x)=0\) となり,恒等的に波が振動しないことを意味するので不適。

\(\lambda=0\) のとき \[X(x)=A_2 x+B_2\] となる(\(A_2,B_2\) は定数)。境界条件 \(X(0)=X(\pi)=0\) より,\(A_2=B_2=0\) となるが,これは \(X(x)=0\) となり (1) と同様に恒等的に波が振動しないことになり,不適。

\(\lambda<0\) のとき \[X(x)=A_3 \sin \sqrt{|\lambda|}x +B_3 \cos \sqrt{|\lambda|}x\] となる(\(A_3,B_3\) は定数)。

境界条件より \(X(0)=X(\pi)=0\) であるので,\[B_3=0, \quad A_3 \sin \sqrt{|\lambda|}\pi =0\] これより,\[\sqrt{|\lambda|}\pi=n\pi,\quad \lambda = -n^2 \quad (n=1,2,\cdots) \] 以上より,\[\lambda = -n^2 \quad X(x)= A_3 \sin nx\]

具体的な \(\lambda\) を求めることが出来たら,\(T(t)\) に代入し,今度は \(t\) に関する微分方程式を解きます。

\(\lambda\) の符号が前述の議論で出ているので,やる操作はそこまで多くありません。

【解答続き】
\(\lambda = -n^2\) を \(t\) の式に代入すると \[T^{\prime \prime}(t)=-n^2 c^2 T(t)\] となる。これは2階の常微分方程式であるので $\lambda$ が負となることに注意すると \[T(t)=C \sin nct + D \cos nct\] となる(\(C,D\) は任意定数)。

以上の議論と,\(u(x,t)=X(x)T(t)\) であることから \[u(x,t)=(C \sin nct + D \cos nct) \sin nx\] となる(\(n=1,2,\cdots\))。

\(u(x,t)\) は様々な \(n\) に対する解があるが,重ね合わせの原理によりすべての \(n\) の場合について足し合わせたものも解になる。すなわち\[u(x,t)= \sum_{n=1}^{\infty} (C_n \sin nct + D_n \cos nct) \sin nx\] これより \[u(x,0)=\sum_{n=1}^{\infty} C_n \sin nx\] \[\frac{\partial }{\partial t}u(x,0) =\sum_{n=1}^{\infty} nc D_n \sin nx\]初期条件が成り立つとき\[C_n=\begin{cases}3 &(n=2)\\ 0 &(n \neq 2) \end{cases},\quad D_n=\begin{cases}\frac{1}{5c} &(n=5)\\ 0 &(n \neq 5) \end{cases}\] であり,従って,求める解は \[u(x,t)=3 \cos 2ct \sin 2x +\frac{1}{5c}\sin 5ct \sin 5x\] となる。

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