2024年度名大数学第4問の問題と解答・解説

名大理系数学第4問 解答・解説

2024年度名古屋大学理系数学第4問の問題と解答・解説を紹介します。

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目次

問題

問題

袋の中にいくつかの赤玉と白玉が入っている。すべての玉に対する赤玉の割合を \(p\) (\(0 \leq p \leq 1\))とする。袋から無作為に玉を一つ取り出して袋に戻す試行を行う。試行を \(n\) 回行うとき,赤玉を \(k\) 回以上取り出す確率を \(f(k)\) とおく。

(1) \(n \geq 2\) に対して,\(f(1)\) と \(f(2)\) を求めよ。

(2) \(k=1,2,\cdots \cdots ,n\) に対して,等式 \[f(k)=\frac{n!}{(k-1)!(n-k)!} \int_{0}^{p} x^{k-1}(1-x)^{n-k}dx\] を示せ。

(3) 自然数 \(k\) に対して,定積分 \[I=\int_{0}^{\frac{1}{2}}x^k (1-x)^kdx\] を求めよ。

(1) の解答・解説

問題

(1) \(n \geq 2\) に対して,\(f(1)\) と \(f(2)\) を求めよ。

確率の問題です。

すべての玉に対する赤玉の割合が \(p\) なので,1回の試行において赤玉を取り出す確率は \(p\) ,白玉を取り出す確率は \(1-p\) であることがわかります。

\(f(1)\) は \(n\) 回試行を行うときに1回以上赤玉を取り出す確率なので,

\(f(1)=1-\)(すべてが白玉である確率)

という余事象を取ってあげると求めることが出来ます。\(f(2)\) も同様に考えると

\(f(2)=1-\)(すべてが白玉である確率+1回だけ赤玉がでる確率)

とすれば計算することが出来ます。

(1) の解答

赤玉を1回も取り出さない確率は \((1-p)^n\) であるので余事象を取ると \[f(1)=1-(1-p)^n\] 赤玉を1回だけ取り出す確率は \(_{n} \mathrm{C}_1 p (1-p)^{n-1}=np(1-p)^{n-1}\) であるので同様に考えて \[f(2)=1-(1-p)^n-np(1-p)^{n-1}\]

(2) の解答・解説

問題

(2) \(k=1,2,\cdots \cdots ,n\) に対して,等式 \[f(k)=\frac{n!}{(k-1)!(n-k)!} \int_{0}^{p} x^{k-1}(1-x)^{n-k}dx\] を示せ。

等式を示す証明問題ですが,文句なしの難問です。

取り組むアプローチとして,取り敢えず誘導を活かす方針で \(f(3),f(4)\) あたりを考えます。

先ほどと同様に余事象を考えると,

\(f(3)=1-\)(すべてが白玉である確率+1回赤玉がでる確率+2回赤がでる確率)
\(f(4)=1-\)(すべてが白玉である確率+1回赤玉がでる確率+2回赤がでる確率+3回赤玉がでる確率)

と右辺第2項の部分がどんどん大きくなっていきます。これを簡潔にまとめると \[f(k)=1-\sum_{i=1}^{k}{}_n \mathrm{C}_i p^i (1-p)^{n-i}\] と書けます。

これより,増え方がある関数の形で書ける,すなわち階差が簡単に書けることがわかります。

階差を取ることが出来たら,等式を示すためには帰納法を使えば良い,という考えると解答として筋道が立てられると思います。しかし

・等式の形が見慣れたものではない
・等式が関数で表されているので数学的帰納法を想起できない(文字バイアス)
・数学的帰納法で示すことがわかってもその後の積分計算が煩雑

という要素から,試験場での正答率はかなり低いのではないでしょうか。

(2) の解答

(1) と同様に考えると \[f(k)=1-\sum_{i=1}^{k}{}_n \mathrm{C}_i p^i (1-p)^{n-i}\] であるので,階差を取ると \[f(k+1)-f(k)=-{}_n \mathrm{C}_k p^k (1-p)^{n-k} \quad \cdots [1]\] また,\[f(k)=\frac{n!}{(k-1)!(n-k)!} \int_{0}^{p} x^{k-1}(1-x)^{n-k}dx \quad \cdots [2]\] を数学的帰納法で示す。

① \(k=1\) のとき \[\begin{align} (\text{[2]右辺}) &=\frac{n!}{0!(n-1)!}\int_{0}^{p} x^0 (1-x)^{n-1}dx \\ &= n \int_{0}^{p}(1-x)^{n-1}dx \\ &= \left[ -(1-x)^n\right]_{0}^{p} \\ &= 1-(1-p)^n =f(1) \end{align}\] よって [2] は成り立つ。

② \(k=i \; (i=1,2,\cdots,n-1)\) で [2] の成立を仮定する。[1] より \[\begin{align} &f(i+1) = f(i)-{}_n \mathrm{C}_i p^i (1-p)^{n-i} \\ &=\frac{n!}{(i-1)!(n-i)!} \int_{0}^{p} x^{i-1}(1-x)^{n-i}dx -\frac{n!}{i!(n-i)!} p^i (1-p)^{n-i} \\ &= \frac{n!}{(i-1)!(n-i)!} \int_{0}^{p} \left(\frac{x^i}{i} \right)'(1-x)^{n-i}dx -\frac{n!}{i!(n-i)!} p^i (1-p)^{n-i} \\ &= \frac{n!}{i!(n-i)!}p^i (1-p)^{n-i} +\frac{n!}{i!(n-i-1)!} \int_{0}^{p} x^i (1-x)^{n-i-1}dx -\frac{n!}{i!(n-i)!} p^i (1-p)^{n-i} \\ &= \frac{n!}{i!(n-i-1)!} \int_{0}^{p} x^i (1-x)^{n-i-1}dx\end{align}\] よって \(k=i+1\) でも [2] は成立し,従って題意は示された。

(3) の解答・解説

問題

(3) 自然数 \(k\) に対して,定積分 \[I=\int_{0}^{\frac{1}{2}}x^k (1-x)^kdx\] を求めよ。

(2) の結果を用いて計算する問題ですが,(2) がわからなくても都合が良くなりそうな \(k\) を探して求めることは出来ます。

\(I\) に形を合わせるために \(n=2k+1\),\(\displaystyle p=\frac{1}{2}\) として \(f(k+1)\) を考えます。このとき \[f(k+1)=\frac{(2k+1)!}{(k!)^2}\int_{0}^{\frac{1}{2}}x^k (1-x)^kdx\] となり \(f(k+1)\) が求まれば良さそうです。

ここで \(f(k+1)\),すなわち \(2k+1\) 回の試行において赤玉を \(k+1\) 回以上取り出す確率は \(\displaystyle \frac{1}{2}\) であるので,これを連立させて解くと \(I\) を求めることが出来ます。

(3) の解答

(2) において \(n=2k+1\),\(\displaystyle p=\frac{1}{2}\) として \(f(k+1)\) を考えると \[f(k+1)=\frac{(2k+1)!}{(k!)^2}\int_{0}^{\frac{1}{2}}x^k (1-x)^kdx\] \(2k+1\) 回の試行において赤玉を \(k+1\) 回以上取り出す確率は \(\displaystyle \frac{1}{2}\) であるので \[\frac{1}{2}=\frac{(2k+1)!}{(k!)^2}\int_{0}^{\frac{1}{2}}x^k (1-x)^kdx\] よって \[I=\int_{0}^{\frac{1}{2}}x^k (1-x)^kdx=\frac{(k!)^2}{2(2k+1)!}\]

解いてみた感想

確率と積分の融合問題という,今までに見たことのないような形の融合問題でした。

余事象を取るだけの (1) は抑えるとして (2) は試験においては白紙答案が大量発生したと推測します。

しかし,いたずらな難問ではなく,考えがいのある面白い問題であるので,過去問として演習する際は解答の過程をしっかり辿って自分のものに出来ると良いと思いました。

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