2024年度名古屋大学理系数学第1問の問題と解答・解説を紹介します。
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問題
関数 \(\displaystyle f(x)=\sqrt{x}+\frac{2}{\sqrt{x}} \; (x>0)\) に対して,\(y=f(x)\) のグラフを \(C\) とする。
(1) \(f(x)\) の極値を求めよ。
(2) \(x\) 軸上の点 \(\mathrm{P}(t,0)\) からちょうど2本の接線を引くことが出来るとする。そのような実数 \(t\) の値を求めよ。
(3) (2) において,\(C\) の2つの接点の \(x\) 座標を \(\alpha,\beta \; (\alpha<\beta)\) とする。\(\alpha,\beta\) がともに整数であるような組 \((\alpha,\beta)\) をすべて求めよ。
(1) の解答・解説
(1) \(f(x)\) の極値を求めよ。
極値を求める問題です。
微分するだけなので確実に答えを合わせにいきたいです。
\[f'(x)=\frac{1}{2\sqrt{x}}-\frac{1}{x\sqrt{x}}=\frac{x-2}{x\sqrt{x}}\] であり,\(f(x)\) の増減を調べると次の通り。\[\begin{array}{c|cccc} \hline x & 0 & \cdots & 2 & \cdots \\ \hline f'(x) & & – & 0 & + \\ \hline f(x) & & \searrow & 2\sqrt{2} & \nearrow \\ \hline \end{array}\] これより \(f(x)\) は \(x=2\) で極小値 \(2\sqrt{2}\) をとる。また,極大値はない。
(1) の計算結果より,グラフを図示すると次の通りになります。
(2) の解答・解説
(2) \(x\) 軸上の点 \(P(t,0)\) からちょうど2本の接線を引くことが出来るとする。そのような実数 \(t\) の値を求めよ。
接線の本数に関する問題です。この問題では
接線の本数は接線の方程式の解の個数に一致する
という定石を思い出して機械的に処理すると良いでしょう。
本問では2つの解が共に0より大きくなることに注意して範囲を絞ります。
名大では解の配置問題は頻出なので抑えておくと良いでしょう
\(C\) の \(x=u \; (u>0)\) における接線の方程式は \[\begin{align} &y =\frac{u-2}{2u \sqrt{u}}(x-u)+\sqrt{u}+\frac{2}{\sqrt{u}} \\ &y=\frac{u-2}{2u\sqrt{u}}x+\frac{u+6}{2\sqrt{u}}\end{align} \] これが \(P(t,0)\) を通るとき \[0=\frac{u-2}{2u\sqrt{u}}t+\frac{u+6}{2\sqrt{u}}\] よって \[u^2 +(t+6)u-2t=0 \quad \cdots [1]\] \(P(t,0)\) から引ける接線の本数は [1] の解の個数に一致する。従って,ちょうど2本の接線が引ける \(t\) の範囲は,[1] が \(t>0\) で異なる2実数解を持つ範囲に等しい。よって\[ \begin{align} g(u) &=u^2 +(t+6)u-2t \\ &= \left(u+\frac{t+6}{2} \right)^2 -\frac{t^2+20t+36}{4}\end{align}\] とすると,求める範囲は \[\cases{\displaystyle -\frac{t+2}{2}>0 \\ \displaystyle g \left(-\frac{t+6}{2} \right) = -\frac{t^2+20t+36}{4}<0 \\ g(0)=-2t>0}\] すなわち \[\cases{t<-6 \\ t<-18, \; -2<t \\ t<0}\] 以上より,求める \(t\) の範囲は \[t<-18\] である。
(3) の解答・解説
(3) (2) において,\(C\) の2つの接点の \(x\) 座標を \(\alpha,\beta \; (\alpha<\beta)\) とする。\(\alpha,\beta\) がともに整数であるような組 \((\alpha,\beta)\) をすべて求めよ。
方程式の解が整数になる組を探します。ここでは
・2つの接点の \(x\) 座標が [1] の2解になる
・解と係数の関係から \(t\) を消去する
という条件を整理すると典型的な整数問題として処理することが出来ます。
[1] の2解が \(\alpha,\beta\) であるので,解と係数の関係より \[\begin{align} \alpha + \beta &= -(t+6) \\ \alpha \beta &= -2t \end{align}\] これより \(t\) を消去して整理すると \[(\alpha -2)(\beta -2)=16\] ここで \(1 \leq \alpha<\beta\) より \(-1 \leq \alpha -2<\beta -2\) であることに注意して \[(\alpha -2,\beta -2)=(1,16),(2,8)\] よって \[(\alpha ,\beta )=(3,18),(4,10)\]
感想
昨年と同様,数Ⅲからの出題でした。
近年の名大理系数学は第1問が他の大問に比べて取りやすい問題が置かれる傾向にあります。本問もその傾向に倣い標準的な難易度であり,名大受験生なら (2) までは手間取らずに処理出来ると良いでしょう。
(3) も問題集に類題はあるような問題ですが,試験場補正も考えると最後まで答えを出しきる人は少ないと予想します。
従って,最後まで答えを合わせることが出来れば良いのですが,現実的には (3) の方針まで最低限書くことが出来れば及第点ではないでしょうか。
2023年の第1問と2022年の第1問を足して2で割ったような問題であると思いました
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