定数変化法を使って1階線形微分方程式 \[ \frac{dy}{dx}+p(x)y+q(x)=0\] を解く方法と例題をまとめました。
1階線形微分方程式の例
関数 \(p(x),q(x)\) に対し \[ \frac{dy}{dx}+p(x)y+q(x)=0\] の形で表される微分方程式を「1階線形微分方程式」といいます。いくつか具体的な例を見てみましょう。
例1 \[ \frac{dy}{dx}+2xy+1+x^2=0 \quad (p(x)=2x, \;q(x)=1+x^2)\]
例2 \[ \frac{dy}{dx}+\frac{e^x}{x} y+\sin x=0 \quad (p(x)=\frac{e^x}{x}, \;q(x)= \sin x)\]
例3 \[ \frac{dy}{dx}+(x+3)y = -3x^3 \quad (p(x)=x+3, \;q(x)=3x^3)\]
形としては変数分離形の微分方程式 \[\frac{dy}{dx}+p(x)Y(y)=0\] と似ています。実際に問題として出題されるときは \[ \frac{dy}{dx}+p(x)y=-q(x)\] の形で問われることも多いです。
1階線形微分方程式の解を導出する
1階線形微分方程式 \[ \frac{dy}{dx}+p(x)y+q(x)=0\] を解くことを考えます。しかし,この形は簡単に解ける形(=変数分離形)ではありません。
解の形は変数分離形の微分方程式と似ている気がする
そこで一旦,\(q(x)=0\) とし,変数分離系の方程式 \[\frac{dz}{dx}+p(x)z=0\] を考えます1。ここで,元の方程式とは別物であることを表すために変数を \(y\) を \(z\) に変えています。
定数変化法を使った解法
まず,上の変数分離形の方程式を解いてみましょう。これは簡単に解くことが出来て,その解は\[ z(x) = A \exp \left( – \int p(x)dx \right)\] となります。
上述の通り,非斉次方程式の解は斉次方程式の解に似ています。そこで定数 \(A\) の部分が何らかの関数だったら上手いこと辻褄が合いそうと考え,定数 \(A\) を関数 \(A(x)\) として計算して,解を求めます。
このような計算方法を定数変化法といいます。
定数変化法を用いて元の微分方程式を解く
定数変化法を用いて微分方程式を解いてみましょう。
今,定数 \(A\) を関数 \(A(x)\) と予想したので,この予想解 \[ y = A(x) \exp \left( – \int p(x)dx \right)\] を元の微分方程式に代入するために微分します。
合成関数の微分法により微分は \[ \begin{align} \frac{dy}{dx} &= A'(x) \exp \left( – \int p(x)dx \right) -p(x)A(x) \exp \left( – \int p(x)dx \right) \\ &=A'(x) \exp \left( – \int p(x)dx \right) \color{red}{-p(x)y} \end{align}\] となります。
これを,元の微分方程式 \[ \frac{dy}{dx}\color{red}{+p(x)y}+q(x)=0\] に代入すると赤で示した \(\color{red}{p(x)y}\) の項が上手いこと消えて \[ A'(x) \exp \left( – \int p(x)dx \right)+q(x)=0\] \[ A'(x) = -q(x) \exp \left( \int p(x)dx \right)\] となります。積分すると \[ A(x)= -\int q(x)\exp \left( \int p(x)dx \right) dx + C\] となりこれが求める \(A(x)\) になります。
予想した解は\[ y = A(x) \exp \left( – \int p(x)dx \right)\]であったので,これに \(A(x)\) を代入すると \[ y=\exp \left( – \int p(x)dx \right) \left[ -\int q(x)\exp \left( \int p(x)dx \right) dx + C \right]\] となり,これが1階線形微分方程式の解になります。
定数変化法を用いた微分方程式の例題
実際に問題を解いて定数変化法の解き方を確認しましょう。
微分方程式 \[\frac{dy}{dx}-2y=2e^{-2x}\] を解きなさい。
定数変化法の導出過程はとても煩雑でしたが,実際には要所要所で積分をしながら求めるのでそこまで煩雑にはなりません。
【解答】
斉次方程式 \(z’-2z=0\) を解くと \[z=Ae^{2x} \quad (A:\text{const})\] となる。ここで,定数 \(A\) を関数に変化させたものが解であると考える。すなわち \[y=A(x)e^{2x}\] であると仮定する。これを微分すると \[\frac{dy}{dx}=A'(x)e^{2x}+2A(x)e^{2x}\] であり,これと \(y=A(x)e^{2x}\) を元の微分方程式に代入すると \[A'(x)e^{2x}+2A(x)e^{2x}-2A(x)e^{2x}=2e^{-2x}\] すなわち \[A'(x)e^{2x}=2e^{-2x}\] となる。これを積分すると \[ \int A'(x)dx=2 \int e^{-4x}dx\] \[ A(x)=-\frac{1}{2}e^{-4x}+C\] 以上より解は \[ y=\left(-\frac{1}{2}e^{-4x}+C \right)e^{2x}\]
- ここで,簡単のために考えた微分方程式 \[ \frac{dz}{dx}+p(x)z=0\] を斉次方程式とよび,もとの1階線形微分方程式 \[ \frac{dy}{dx}+p(x)y+q(x)=0\] を非斉次方程式といいます。 ↩︎
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