本記事では統計力学の事前準備として「そもそも統計力学とは何か?」ということと,どのように考えていくのかについて簡単な概要をまとめます。
統計力学の考え方
統計力学では基本的に,粒子数や対象となる物体の数が非常に多いものに対し,一つ一つの系の振る舞いは考えずに「統計量」と呼ばれるものを使ってその系の物理的な振る舞いを考察します。
ここで統計量とは簡単に平均値や分散などのことを指します。
例えばですが,ある学生の集団がいて,集団に対して数学のテストを行ったときに,生徒1の点数は61点,生徒2の点数は34点,…といったときに個々の点数は気にせず,平均点が60点であったとしましょう。
ここから個人の点数は気にせず,集団の学力をある程度推し量る,ということは日常でもある程度起こり得る現象ですよね。
統計力学ではこのような考え方を実際の物理現象に適応します。つまり,粒子数 $N$ のある系に対し,この系の示すエネルギー平均値 $\overline{E}$ は大雑把にどの程度なのか…ということを考えていく,と思えば多少はイメージがつくのではないでしょうか。
統計力学の概要
今後の学んでいくことのイメージがある程度掴めたところで,先にこれから学ぶ内容について簡単に概要を示します。統計力学では大きく,系の対象を
- ミクロカノニカル分布:粒子数 $N$,体積 $V$,エネルギー $E$ が一定
- カノニカル分布:粒子数 $N$,体積 $V$,温度 $T$ が一定
- グランドカノニカル分布:化学ポテンシャル $\mu$,体積 $V$,エネルギー $E$が一定
と呼ばれる,3つの枠組みで考えます。
所与の系を上記の適切な分布として捉え,計算する,というのが統計力学における作法のようなものとしてあります。
古典統計力学と量子統計力学
少し難しい話ですが,統計力学では上のように系を設定したあとに「古典統計力学」あるいは「量子統計力学」と呼ばれる二つの考え方のいずれかを用いて系の物理量の計算を行います。
今の段階で詳細を詰める必要はありませんし,記事についてはその都度補足しますが,捉え方として二つの枠組があると思っていただけると幸いです。
統計力学に必要な数学的準備
ここでは統計力学で特に多く使う典型的な計算についてまとめました。
統計力学を学ぶ方は恐らく微積分はある程度学んでいると想定されますが,以下の記事の内容を事前に理解しておくと進みが良くなるかと思われます。
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