ガンマ関数 \[\Gamma (z)=\int_{0}^{\infty}e^{-z} t^{z-1}dt\] とその性質について紹介します。
また,背景にガンマ関数がある入試問題や,統計力学におけるガンマ関数の使い方も紹介します。
- ガンマ関数の定義と性質+証明
- ガンマ関数の応用例と入試問題
ガンマ関数の定義
\[\Gamma (z)=\int_{0}^{\infty}e^{-z} t^{z-1}dt \; (z>0)\]
で定義される関数をガンマ関数といいます。この関数は,自然数で定義された階乗記号を実数に拡張するための関数で,統計学においてしばしば登場します。
ガンマ関数の性質とその証明
ガンマ関数について,次の性質が成り立ちます。
- 性質1\[ \Gamma (1) =1\]
- 性質2 \[ \Gamma \left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}\]
- 性質3 \[ \Gamma (z+1) =z \Gamma (z)\]
- 性質4 \[ \Gamma (n+1) =n! \quad n \in \mathbb{N}\]
特に性質3と4はガンマ関数の本質に関わる大事な性質です。実際に証明してみましょう。
ガンマ関数の性質の証明
性質1の証明
\[ \Gamma (1) =1\]
性質1は\(z=1\) を代入することで容易に確かめることが出来ます。
\[\begin{align} \Gamma (1) &= \int_{0}^{\infty} e^{-t}dt =\left[-e^{-t} \right]_{0}^{\infty} \\ &=1 \end{align}\]
性質2の証明
\[ \Gamma \left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}\]
\(\displaystyle \frac{1}{2}\) が煩わしいので変数変換をしてみましょう。すると,ガウス積分 \[\int_{0}^{\infty}e^{-u^2} du\] の形が出てくるので,計算すると示すことが出来ます。
\[ \begin{align} \Gamma \left(\frac{1}{2}\right) &= \int_{0}^{\infty} e^{-t}t^{-\frac{1}{2}}dt \\ &= \int_{0}^{\infty}e^{-u^2} u^{-1} 2u du \quad (t=u^2) \\ &= 2\int_{0}^{\infty}e^{-u^2} du=\sqrt{\pi} \end{align}\]
ここで,3行目でガウス積分の公式を用いた。
性質3の証明
\[ \Gamma (z+1) =z \Gamma (z)\]
部分積分法を使って計算すると直ぐに性質3を得ることが出来ます。
\[ \begin{align} &\Gamma (z+1) = \int_{0}^{\infty} e^{-t}t^{z}dt \\ &=\left[-e^t t^z \right]_{0}^{\infty}+\int_{0}^{\infty} ze^{-t}t^{z-1}dt \\ &= z \Gamma (z) \end{align}\]
性質4の証明
\[ \Gamma (n+1) =n! \quad n \in \mathbb{N}\]
性質3の自然数版です。部分積分を用いて性質3を示してあるので,特に \(z(1)\) の場合だけ考えてるとすぐに示せます。
\(z=n\) とし,性質3を繰り返し用いると \[ \begin{align} \Gamma (n+1) &=n \Gamma (n) \\ &= n(n-1)\cdot \cdots \cdot 2 \cdot 1 \cdot \Gamma (1) \end{align}\] 性質1より,\(\displaystyle \Gamma (1) =1\) であるので \[ \Gamma (n+1) =n! \]
ガンマ関数では特に性質3,4が重要です!
この2つを見比べると \[\Gamma (z+1) =z \Gamma (z)\] \[\Gamma (n+1) =n!\] より,ガンマ関数は自然数では階乗を表し,実数においても階乗と同じような扱いを出来ることがわかります。
ガンマ関数を使った例
統計力学での応用
ガンマ関数は「\(n!\) を連続実数に拡張して考えることが出来るようにした関数」であり,主に \(n\) 次元の計算をする統計力学で用いられます。
背景にガンマ関数がある入試問題 ー弘前大2015ー
次の問題はガンマ関数が背景になっています。
\(n\) を自然数とする。
(1) 関数 \(f(x)=x^{n+1}e^{-x}\) の \(x \geq 0\) における最大値を求めよ。
(2) 極限 \(\displaystyle \lim_{x \to \infty} x^{n}e^{-x}\) を求めよ。
(3) すべての自然数 \(n\) に対し,\[ \lim_{x \to \infty} \int_{0}^{x}t^n e^{-t}dt=n!\] を示せ。
本問では高校数学内での解法として,誘導に従いつつ,数学的帰納法を用いて証明します。
\[ \begin{align} f'(x) &= (n+1)x^n e^{-x}-x^{n+1}e^{-x} \\ &=(n+1-x)x^n e^{-x} \end{align}\] である。
増減を調べると,\(f(x)\) は \(x=0\) で極小値 \(0\),\(x=n+1\) で極大値かつ最大値をとることがわかる。このとき \[ f(n+1)= \left( \frac{n+1}{e} \right)^{n+1}\] となる。
最大最小を求められているので,微分して増減を調べることで最大値を求めることができます。
\(x>0\) のとき,(1)より \[ 0<x^{n+1}e^{-x}<\left( \frac{n+1}{e} \right)^{n+1}\] であるので,両辺を \(x(>0)\) で割ると \[ 0<x^{n}e^{-x}<\frac{1}{x} \left( \frac{n+1}{e} \right)^{n+1}\] となる。\(x \to \infty\) のとき(右辺)→ 0 より,はさみうちの原理から \[\lim_{x \to \infty}x^{n}e^{-x} =0 \]
求める極限は,簡単には求まる形ではない(∞/0 の形)かつ,(1)の関数 \(f(x)\) と形が似ているのでこの形に持っていき,はさみうちの原理で挟むことを考えると求めることが出来ます。
実際には指数関数と整関数では指数関数のほうが明らかに収束速度が早いので答えは0になると容易に検討をつけることができます
すべての自然数 \(n\) に対し,命題 \(P\) を \[ P(n)= \left\{ \lim_{x \to \infty} \int_{0}^{x}t^n e^{-t}dt=n! \right\} \] とする。
\(P(1)\) は性質(1)の証明より簡単にわかる。
いま,自然数 \(k\) に対し,\(P(k)\) を仮定し,\(P(k+1)\) を示す。\[ \begin{align} &\int_{0}^{x}t^{k+1} e^{-t}dt \\ &= [-t^{k+1}e^{-t}]_{0}^{x}+(k+1)\int_{0}^{x}t^k e^{-t}dt \end{align} \] \(x \to \infty\) のとき,前問の結果より(第1項)→ 0 であり,\(P(k)\) より,\[ \lim_{x \to \infty} \int_{0}^{x}t^{k+1} e^{-t}dt=(k+1)!\] となる。よって\(P(k+1)\) も成り立ち,題意の主張を得る。
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