複素関数の性質と三角関数・指数関数・対数関数への拡張

複素関数 \[f(z)=u(x,y)+iv(x,y)\] における基本事項と様々な関数(\(\sin ,\log\) など)の表し方をわかりやすく紹介します。

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複素関数への拡張と定義

今までの議論では関数 \(f\) は実数を定義とするものが殆どでしたが,この関数を複素数に拡張することを考えます。

複素関数の定義

複素関数 \(f(z)\) は \(x,y\) の実数値関数 \(u(x,y),v(x,y)\) を用いて \[f(z)=u(x,y)+iv(x,y)\] の形で与えられる(\(i\) は虚数)

このように,変数に複素数をとるように拡張した関数を複素関数といいます。いくつか例を見てみましょう。

複素関数の例

例題1

次の関数の実部 \(u(x,y)\) と虚部 \(v(x,y)\) を求めなさい。

(1) \(f(z)=z^2\)  (2) \(f(z)=e^z\)

このような関数では複素変数 \(z=x+iy\) (\(x,y\) は実数)を代入し,実部と虚部にわけることで \(u,v\) を求めることが出来ます。

解答

(1) 複素変数 \(z=x+iy\) を代入すると \[f(z)=(x+iy)^2=(x^2 -y^2)+i(2xy)\] より \[u(x,y)=x^2-y^2,\; v(x,y)=2xy\]

(2) 複素変数 \(z=x+iy\) を代入すると \[\begin{align} f(z) &=e^{x+iy}=e^x e^{iy} \\ &=e^x (\cos y +i\sin y) \\ &=e^x \cos y +i e^x \sin y \end{align}\] よって \[u(x,y)=e^x \cos y,\; v(x,y)=e^x \sin y\]

特に (2) の \(f(z)=e^z\) を複素数の指数関数といいます。

あんとら

\(z=x\) (実部のみ)とすると \(f(x)=e^x\) となり,実数の指数関数の自然な拡張になっていることがわかります

複素数における三角関数

三角関数を複素数で表すことを考えます。オイラーの公式と \(\theta \) を \(-\theta\) に置き換えた式 \[e^{i\theta}=\cos \theta + i\sin \theta \\e^{-i\theta}=\cos \theta -i\sin \theta \] より \[\cos \theta =\frac{e^{i \theta}+e^{-i \theta}}{2},\; \sin \theta =\frac{e^{i \theta}-e^{-i \theta}}{2}\] と表すことが出来ます。ここで,\(\theta\) を複素変数 \(z\) で置き換えた式

\[\cos z =\frac{e^{i z}+e^{-i z}}{2},\; \sin z =\frac{e^{i z}-e^{-i z}}{2}\]

複素数における三角関数として定義します。また,\(\tan z\) は \[\tan z =\frac{\sin z}{\cos z}=\frac{1}{i}\frac{e^{i z}-e^{-i z}}{e^{i z}+e^{-i z}}\] で定義されます。

例題2

\(\cos z \) の実部 \(u(x,y)\) と虚部 \(v(x,y)\) を求めなさい。

解答

\(\displaystyle \cos z =\frac{1}{2}(e^{i z}+e^{-i z})\) に \(z=x+iy\) を代入して \[\begin{align} &\cos z =\frac{1}{2}(e^{i(x+iy)}+e^{-i(x+iy)}) \\ &=\frac{1}{2}\{e^{-y}(\cos x +i\sin x )+e^{y}(\cos x -i\sin x ) \} \\ &= \frac{1}{2}\{\cos x (e^{y}+e^{-y})+i \sin x (e^y-e^{-y}) \}\end{align}\] よって \[u(x,y)=\frac{1}{2}\cos x (e^{y}+e^{-y}) \\ v(x,y)=\frac{1}{2}\sin x (e^y-e^{-y})\]

複素数における対数関数

複素数の対数関数 \(w= \log z\) は,実数の対数関数と同じく,指数関数 \(w=e^z\) の逆関数,すなわち \[e^w=z\] として定義されます。

\(z=re^{i \theta}\) (\(r>0\))に対して \(w=u+iv\) とおくと \[z=e^w=e^{u+iv}=e^u e^{iv}=re^{i \theta}\] であるので \[r=e^u,\quad v=\arg z\] が得られ,特に第2式において \(n\) を整数として \[u=\log r ,\quad v= \theta +2n\pi\] が得られます。このように1つの \(z\) に無限個の値が対応する関数を無限多価関数といいます。

ここで,\(w=\log z\) において \(-\pi < \arg z \leq \pi\) に制限すると,1つの \(z\) に対して1つの \(w\) が対応します。これを \(\log z\) の主値といい,\(\mathrm{Log}\; z\) で表します。

複素数における対数関数の定義

複素数 \(z\) に対し,対数関数 \(w= \log z\) を \(w=e^z\) の逆関数で定義すると \[\log z =\log r +i(\theta +2n \pi) \] で表される(\(n\) は整数)

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