【例題あり】電荷と電荷保存則

「静電磁場」の扱いを考えていく前段階としてここでは電荷と電荷保存則についてまとめます。

目次

電荷の基本的な性質まとめ

物質を構成する基本的な粒子(陽子や電子など)が持つ,電気的な性質の根源となる量を電荷(または電気量)と呼びます。

電荷の性質

  • 電荷には,陽子(proton)が持つ「正電荷」と,電子(electron)が持つ「負電荷」の2種類があります。
  • 互いに異なる種類の電荷(正と負)は引き合い(引力),同じ種類の電荷(正と正,負と負)は反発し合います(斥力)。
  • 電荷の量は $q$ や $Q$ といった記号で表されます。
  • 電荷のSI単位はクーロン (Coulomb),記号は $\mathrm{C}$ です。

電子1個が持つ電荷の大きさは「電気素量」と呼ばれ,$$ e \approx 1.602 \times 10^{-19} \, \mathrm{C} $$ です。電子の電荷は $-e$ と表されます。

電荷保存則

重要な法則として,「電荷保存則」があります。これは「孤立した系(外部との物質やエネルギーのやり取りがない系)において,その系内の全電荷の代数和は常に一定である」という法則です。

言い換えると,電荷が勝手に生まれたり消えたりすることはない,ということも出来ます。

あんとら

ただし,正負の電荷が同時に同量だけ生成・消滅する「対生成」「対消滅」は起こり得ます

例題

問題1

同じ形状・大きさの小さな導体球Aと導体球Bがある。Aには $q_A = +3.2 \times 10^{-9} \, \mathrm{C}$,Bには $q_B = -1.2 \times 10^{-9} \, \mathrm{C}$ の電荷がそれぞれ与えられている。

(1) このときのAとBの間には,引力と斥力のどちらが働くか。

(2) 二つの導体球を接触させた後,再び元の位置に離した。接触後のAの電荷 $q_A’$ とBの電荷 $q_B’$ を求めなさい。
(3) 接触後,AとBの間には引力と斥力のどちらが働くか。

あんとら

各問題のポイントとして
(1) 異符号の電荷間には引力が働きます。
(2) 導体を接触ささせると,全電荷量が保存されたまま,均等に再分配されます。
(3) 再分配後の符号で力を判断します。

【解答】
(1) $q_A$ は正電荷, $q_B$ は負電荷である。異なる符号の電荷間には引力が働く。

(2) 導体球を接触させると,二つの球を合わせた一つの導体とみなせる。電荷は二つの球の間で自由に移動し,再分配される。

系全体の全電荷 $Q_{total}$ は,電荷保存則より接触前後で不変である。$$ Q_{total} = q_A + q_B = (+3.2 – 1.2) \times 10^{-9} = +2.0 \times 10^{-9} \, \mathrm{C} $$ 二つの導体球は同じ形状・大きさであるため,接触後に再び離すと,全電荷は均等に分配される。

よって,接触後の各電荷は $$ q_A’ = q_B’ = \frac{Q_{total}}{2} = \frac{+2.0 \times 10^{-9}}{2} = \color{red}{+1.0 \times 10^{-9} \, \mathrm{C}} $$ である。

(3) 接触後の電荷は $q_A’$,$q_B’$ ともに正電荷である。同じ符号の電荷間には斥力が働く。

問題2

ミリカンの実験を模して,微小な油滴の帯電量を測定したところ,以下の5つの異なる値が得られた(単位は $\times 10^{-19} \, \mathrm{C}$)。

$A: -3.2$, $B: -8.0$, $C: -4.8$, $D: -12.8$, $E: -6.4$

これらの測定値が,すべてある最小の電荷量(電気素量 $e$)の整数倍 $n$ ($q = -ne$) になっていると仮定する。

(1) これらの測定値から推定される電気素量 $e$ の値($\mathrm{C}$)を求めなさい。

(2) 各測定値 $A \sim E$ に対応する整数 $n$ の値をそれぞれ求めなさい。

あんとら

電荷の最小単位(電気素量)が存在するという仮定は,「全ての測定値が,ある値 $e$ の整数倍になっている」ことを意味します。

したがって,測定値たちの(絶対値の)最大公約数 $e$ を見つけることが目標となります。

【解答】
(1) 各測定値が $q = -ne$ ($n$は整数) で表されると仮定する。$e$ は「電荷の最小単位」であるはずなので,$e$ は各測定値 $|q|$ の最大公約数であると推定できる。

測定値の絶対値は $3.2, 8.0, 4.8, 12.8, 6.4$ (単位 $10^{-19} \mathrm{C}$) である。従ってこれらの最大公約数を探すと,
$$3.2 = 2 \times 1.6$$ $$8.0 = 5 \times 1.6$$ $$4.8 = 3 \times 1.6$$ $$12.8 = 8 \times 1.6$$ $$6.4 = 4 \times 1.6$$
よって,すべての測定値は $1.6 \times 10^{-19} \, \mathrm{C}$ の整数倍となっていることがわかる。
推定される電気素量 $e$ は,$$ e = 1.6 \times 10^{-19} \, \mathrm{C} $$ である。

(2) (1)の計算過程より,$n = |q| / e$ であるから,$$A: n = 3.2 / 1.6 = 2$$ $$B: n = 8.0 / 1.6 = 5$$ $$C: n = 4.8 / 1.6 = 3$$ $$D: n = 12.8 / 1.6 = 8$$ $$E: n = 6.4 / 1.6 = 4$$ である。

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